ジョルジュ・ブラック(GEORGES BRAQUE)
ジョルジュ・ブラック(1882ー1963)はフランス生まれ。
81歳で亡くなるまでに絵画、版画、彫刻、コラージュといった芸術の様々な分野で創造性あふれる数々の作品を生み出しました。
ブラックはピカソとともに『キュビズム』を創始、探求したことで知られています。
その語源の元となった1908年制作の油彩画『レスタックの家々』に代表されるように、様々な角度から見たモチーフを組み合わせ、一つの画面に描く型破りな表現で伝統的な絵画の常識や概念を打ち破る革新的な芸術家として美術史にその名を刻んでいます。
一方で、ブラックは1914年に勃発した第一次世界大戦に従軍し頭部を負傷。頭蓋骨に穴が開き、一時的に失明するほどの重傷を負います。
長期療養を経て除隊する1916年以降再び絵を描き始めるものの、以後は従軍前の豊かな色彩は影を潜め、暗めの色調で骸骨や歪んだ人物画を描くことが多くなります。
晩年には鳥や植物の静物画など明るいトーンの作品も数多く制作するなど、年代によって作風が絶えず変化していくのもブラックの作品の特徴です。
代名詞であるキュビズムという枠組みにとらわれず、自由な解釈でブラックの作品を鑑賞するとことで、この巨匠の芸術世界の奥深さをより強く感じることができます。
制作の面では、ブラックは自らの芸術世界を表現するために様々な表現方法に取り組みました。
なかでも膨大な点数の作品を生み出した版画は、ブラックにとって芸術世界を表現するための極めて重要な手段でした。
ブラックは主にリトグラフ(石板を用いた技法)を用いて版画を制作し、挿絵本や美術雑誌『ヴェルヴ』や『デリエール・ル・ミロワール』収録用にも度々リトグラフを制作しています。
筆で描く絵画にはない、版画の独特の質感や手作業による工程に深い愛情を感じたブラックは「版画家」として、最晩年までに数多くの名作を世に送り出すことになります。